第9章 謝って!
「ごめんね…。わたし勘違いしちゃって…」
私は小娘改め演劇部の1年女子に謝る。
「いえ…。参考になりました。嫉妬に震える女の情念…。リアルでした」
1年女子が言う。
嫌味? でも何にも言い返せない…。
「僕はやりたくないって言ったんだよ」
紘夢が言う。
「誤解させて悪かったね。
相手役の男子が風邪で休みでね。逢坂くんに練習の代役を頼んだんだ。僕は全体の雰囲気を見たかったからね。
まあでも逢坂くんの演技では参考にならなかったけどね。ははは」
鳴海くんが私に説明する。
……
「ふふ…。少し恥ずかしかったけど…なんだか嬉しかったなぁ…」
帰り道、紘夢が話す。
「わたしは恥ずかしいしかないよ…。しばらく演劇部とE組には寄り付かないね…」
私は答える。
演劇部の部室なんだから普通に考えたら演劇だよね。
なんで気づかなかったんだろ…わたし。
盗聴器から聞くと怪しく感じちゃうのかな…。
そういえば…
「そういえば、受信器も発信器もわたしが持ってるのに、どうして演劇部の音が聞こえたのかな…」
私は疑問を口にする。
「さあ…。盗聴器って結構いろんな所に仕掛けられているらしいからね…。それに波長が偶然あったのかな…」
彼が私のほうを見ないで言う。
む。やっぱり紘夢、演技下手。怪しい。
私は普段あまり使わない頭を使って考える。
うーん…
「ボールペン!」
「えっ」
私の言葉に彼がビクッとする。
「やっぱり。そうだよね。ペンケース落としたときに入れ替わったんだよね? 紘夢、ちょっと出してみて?」
私は彼に詰め寄る。
「あれ…? ペンケース…ないな…。学校に忘れてきたかな…」
彼がカバンを探るフリをして言う。
「そんなこと言って…。わたしがそのカバンに手突っ込んで探してあげようか?
わたし嘘つき嫌いだよ。出てきたらどうなるかわかるよね?
ちゃんと探して?」
私は優しく言う。
「はい」
紘夢は素直に返事する。