第9章 謝って!
「こんにちは、シナリオの参考に少し見学させて下さい…
あれ? ナコ。君も美術室に? 偶然だね」
紘夢が美術室に入ってきて、私と廣瀬くんににっこり微笑む。
「ホントすごい偶然だね」
私はにっこり微笑み返す。
「なんだ。逢坂、おまえも見学かよ。まあ、俺の絵見ていけよ。ちょうど、成宮に説明してたんだ…」
廣瀬くんも紘夢に声をかける。
紘夢は話をさえぎるように答える。
「いや、僕は美術室の配置とか構図を見たかっただけだから…
ナコももういいよね?」
紘夢が私の顔を見る。
頷いて私は立ち上がる。
「うん。廣瀬くん、説明してくれてありがとう。楽しかった」
廣瀬くんの顔を見てお礼する。
「おう、また来いよ…。
って、逢坂、成宮のこと下の名前呼びって随分なれなれしいな。
もしかして、おまえら付き合ってんの?」
廣瀬くんは私と紘夢の顔を交互に見る。
「知らなかった? そうだよ」
「マジか!」
廣瀬くんがビックリしてる。
…
「知らなかったよ…。ナコが美術に興味があったなんて…」
廊下を歩きながら紘夢が言う。
「ふふっ…」
私はあいまいに笑っておく。
紘夢は話を続ける。
「クリエイティブなことに興味があるなら、僕のシナリオを手伝わないかい?
何も他の男を頼らなくていいんじゃないかな」
「ふふふ…」