第1章 チア女子
次の日の放課後、カラオケボックス。
私はカラオケ自体は大好き。
友達の前で歌うのも好きだし、友達の歌を聞くのも好き。
でもよく知らない人がいると、私は歌うのは恥ずかしい。
「ナコちゃんも歌いなよ〜」
桃越先輩の友達が言ってくる。
えと、あの、えっと…
「ごめんね〜。ナコ、緊張しちゃってるから、もう少し慣れてから歌うね。今は変わりに私が歌う! リモコン貸して〜」
ユキが代わりに言ってくれる。
助かった。ありがとう。
私は目でお礼を言う。
ユキの歌を聞いているとき、桃越先輩にそっと話しかけられる。
「こういう場所苦手?」
「いえ、あの…カラオケは大好きです。でも知らない人が多いとちょっと緊張しちゃうんです」
あれ? でも桃越先輩と話するのもほとんど初めてだけど、意外と話しやすい。
「そうなんだ。でもチアやってるときは堂々としてたよ」
見てくれたんだ。
私はなぜかちょっとドキッとする。
「チアは1人じゃないですから」
私は答える。
「なるほど。じゃあ俺と一緒に歌おうか」
…
カラオケの後、男子たちに食事に誘われたけど、断って女子だけでファミレスに行く。
「ナコ、桃越先輩といい感じだったね」
ユキに言われる。
「だね〜。ナコが男子と一緒に歌うなんてね」
リカとマユにも言われる。
「うん。桃越先輩、意外と話しやすかった」
私は答える。
「付き合っちゃえば?」
ユキに笑いながら言われる。
「え? ユキ、桃越先輩のこと好きなんじゃないの?」
私は聞いてみる。
「違う、違う〜。桃越先輩の友達ならイケてるかなと思って、うちら便乗させてもらっただけ」
ユキが答える。
「うん。桃越先輩とナコならお似合いだよ」
「だね。ナコ、モテるのに誰とも付き合わないなんてもったいないよ。
それに、ちゃんとした彼氏がいたほうが変なのに言い寄られなくなると思うよ?」
リカとマユも口ぐちに言う。
そういうものなのかな…。