第1章 チア女子
「ナコ、明日の放課後みんなでカラオケ行くんだけど行くよね?」
部活終わりで着替えてるとき、同じクラスのユキに誘われる。
「カラオケ? 行く行く」
私は喜んで答える。
「よかった。もう桃越先輩にナコも呼ぶよって言っちゃったんだ」
ユキは舌を出してお茶目に笑う。
可愛い。
私は自分の友達が可愛くて誇らしくなる。
けど…
「桃越先輩ってあのちょっとチャラそうな先輩? 友達もチャラいんじゃないの…?」
私は少し不安になる。
「大丈夫だよ。うちらも行くから。いつも通り悪い虫がつかないようにガードしてあげる」
リカとマユが笑顔で私の腕を組んでくる。
リカとマユも2年。クラスは違うけど。
みんなチア部のレギュラー。
1年のときからずっと仲良し。
「みんなが行くなら…行こうかな」
うんうんってみんなニコニコして頷く。
チアでも普段の学校生活でも、私を支えてくれる大好きな友達。
…
私はチアなんてやってるけど…
実は人前に出るのがすごく苦手。
じゃあ、なんでやってるかというと。
単に子供の頃からやってるから。
あまりにも引っ込み思案だった私を、母が心配してチアダンスチームに入れてくれた。
そこで友達がいっぱい出来たし、可愛い衣装を着て踊ることに目覚めた。
続けていたら、そこそこ上手に出来るようになった。
でも人ってそんなに変わらない。
チア以外では相変わらず引っ込み思案。
チアでだって。
私はチームの子たちがいるからセンターに立てるだけ。
1人じゃ私は何もできない。
チアで私を支えてくれる。
人付き合い苦手な私を理解して支えてくれる。
バカみたいな男子から私を守ってくれる。
大好きな友達。