第1章 チア女子
次の日。
学校に登校してくると、下駄箱に手紙が5通。
昨日、通し練習があったせいか多い。
その中の1通に目が止まる。
宛名の所に見慣れた綺麗な文字で
成宮 ナコ 様
差出人の所は空白。
見ていてくれてたんだ。
…
昼休み、友達とお弁当を食べた後。
特に用がないと、私は一人で図書館へ行く。
本を読んだり勉強したり。
私が学校で一人になるのはこの時間だけ。
今日は図書館で手紙を開封して読む。
いまどき、ラブレターなんて書いてくるのはたいてい女子。
ていうか、私の場合は男子からこんなきちんと封に入った手紙なんてもらったことない。
バカみたいにスマホ振りながらID交換しよ〜って言ってくるか、
せいぜいメモ帳みたいな紙にIDかメアドだけ書いて寄越してくるかって感じ。
とりあえず、1年生の女子からの手紙を開封して読む。
可愛らしい丸文字で
とても素敵でした。
憧れます。
頑張ってください。
というような内容が礼儀正しい文章で書いてある。
私はとても嬉しくなる。
後の3通もだいたい一緒。
最後の1通。
丸文字ではない大人っぽい綺麗な文字。
文学的とも思える素敵な言葉で、私の容姿や私自身のこと、昨日のチアのこともほめたたえてくれている。
ちょっとほめすぎにも思えるけど、説得力のある文章で、私はもしかしてこれぐらいの価値がある人間なのかなって思ったりもする。
この人は半年ほど前から、2週間に一度ぐらいの割合で手紙をくれる。
差出人の名前はいつもない。
自分のことは全然書かれていないので、男子なのか女子なのかもわからない。
まあ、わざわざ手紙を書いてくるなんて多分女子だとは思うけど…
私はいつも想像してしまう。
こんな男の人が私のことを想ってくれていたらなぁ…
って。