第14章 黒い誘惑
「手、冷たいかな…?」
彼の手が私の頬にそっと触れる。
冷たい。
「冷たい、冷たい」
私は笑う。
「そっか、ごめんね」
彼は自分の口もとに両手を持っていき、息ではぁーってして温める。
「あんまり温まらないな…。ナコ温めて」
そう言って、彼は私の太ももの間に手を入れる。
「ふふ、あったかい? そこ」
私は尋ねてみる。
「温かい…すごく…ていうか…」
「…?」
彼がじっと私の脚を見る。
なんか気持ち悪っ。
「これはタイツ? パンスト?」
私の履いてる黒タイツを見つめて彼が問いかける。
「…あぁ、これはタイツ」
「何デニールなの?」
なんでそんな言葉知ってるの?
気持ち悪っ。
「…80デニール」
「そうなんだ…。いいね、この微妙な透け感…」
そうつぶやいて、彼は太ももをなでなでする。うわぁ…
「わぁ…こんな触り心地なんだ。初めてさわった…ふふ…ふふふ…」
顔がにやけてる。気持ち悪い。
「ふ、ふふ…最近、急に寒くなったからねぇ」
私は愛想笑いしておく。
「あたたかいの? こんな薄いので」
引き続き、なでなでしながら彼が尋ねる。
「あったかいよ。履いてるのと履いてないのでは全然違う」
「そうなんだ。ねぇ、破っていい?」
「なんでっ!?」