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文芸部×チア部

第12章 僕のミス藤城


私は先に部室を出て、紘夢と落ち合う。

正門の近くに、長野麗子と新体操部の仲間たちの姿が見えた。

「あっ…わたし、あの人苦手。ちょっとやり過ごそう…」

紘夢を連れて隠れようとすると…

「あらー成宮ナコさん。ダサい彼氏を連れてるからって、隠れなくてもよろしくてよ」

見つかった!

ていうか…

「ダサいですって?」

ピクッとする私を、紘夢がまあまあってなだめる。

あんたのこと言われてるんだよ!

私はグイッと前に出て、長野麗子に対峙する。

「あんたの彼氏は頭の中身がダサいけどね。脳みそ筋肉の彼氏には源氏物語54帖の題名すべて言えないでしょうね。クスクス…」

長野麗子は少しひるむ。

えっ54帖? えっ?

と紘夢が小さい声でつぶやく。

長野麗子は反論する。

「そんなの言えなくてもどうでもいいし! だいたいあなたたちチア部は、そんな脳みそ筋肉の運動部のためにパンチラして踊っているんじゃなくて?」

……。

「おい、なんて言った」

私は自分の手をギュッと握る。

「ナコ…行こうか。ねぇ、ナコ…」

紘夢が心配そうに私の肩を叩く。

「あれはパンツじゃないわよ。自分が水着着てボウリングのピン振りまわしてウロチョロしてるからって…同じように考えないでくれる?」

「はぁ? レオタードだし! ボウリングのピン…って、クラブのこと? 意味のわからないケンカ吹っかけないでもらえるかしら!?」

「先にケンカ吹っかけてきたのはあんたでしょ!」

飛びかかろうとする私を、紘夢が羽交い締めにして止める。

長野麗子も仲間たちになだめられて、引っ張られて去っていった。



「あの…ナコ。僕54帖全部は覚えてない…」

紘夢がボソッと言う。

「そう…」

私は少しがっかりする。


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