第12章 僕のミス藤城
紘夢と下校中、私は思い切って切り出す。
「あの、紘夢…ミス藤城ってイベント知ってる? もうすぐエントリーが始まるね」
「ミス藤城…? あぁ、そんなイベントあったっけ。僕はもともとナコにしか興味ないし…。
ふふっ、僕のミス藤城はナコだよ」
なんか上手いこと言って、彼が微笑む。
「なんか…わたし…それに…エントリーしないといけないような状況なんだよねー…」
ポツポツと私は話す。
「ダメッ! 絶対っ!」
彼が私の前に回り込んで、両腕をギュッと握る。
そう言うと思った…。
……
翌日の放課後。
ユキが紘夢を説得する。
「逢坂くん、ナコを隠しておきたい気持ちはわかるけど…。ナコは既に学園のアイドルだよ。そして、チア部のセンター。藤城の勝利の女神として、他校の子にも名前を知られているぐらいなの。もう、開き直るのが得策だと思うなぁ。
逢坂くんだって自分の彼女がミス藤城だなんて鼻が高いと思うんだけど…」
「僕、思うんだけど…ミス藤城にはユキちゃんが出たほうがいいんじゃないかな?
ナコはミスコンの類に出るには背が低いだろ? その点、ユキちゃんは背が高くてスラッとしている。
それに…ナコに負けず劣らずキュートだ」
紘夢がにっこりと微笑む。
ユキも少し嬉しそうに微笑み返す。
なかなかやるな…紘夢。
でもユキがそんなことで負けるはずもない。
「これはチア部のプライドもかかっているの。センターのナコがミス藤城を勝ち取ることに意味があるの」
「チア部のためっていうなら、なおさらユキちゃんのほうがいいんじゃないかい? 君はチア部のキャプテンだろ?」
「チアではキャプテンなんかよりセンターのほうが偉いの。センターが神なの!」
ユキが力説する。
そんなの初めて聞いたけど。
……
交渉は決裂した。