第12章 僕のミス藤城
部活が終わり、体育館の近くを通って、ユキたちと部室に向かう。
前から、新体操部の長野麗子が新体操部の部員を数人引き連れて歩いてきた。
嫌な予感がする…。
「あらー。チア部のセンターにして学園のアイドルだけど、彼氏がちょっと地味な成宮ナコさん。取り巻き引き連れて、体育館に何のご用かしら?」
キタ…!
なんか、以前からこの人にライバル視されてるんだよなぁ…。
返答出来ないでいると、ユキが前にささっと出て、代わりに答えてくれる。
「私たちは別に体育館に用はなくてよ! チア部の部室がこの近くなだけですわ」
ユキ…口調が引きずられているよ…。
「あら、そう…。てっきり偵察に来たのかと思ったわ。何のことって…あなたたちもご存じでしょう? ミス藤城…もうすぐエントリーが始まりますわ」
長野麗子が言う。
ミス藤城…もうそんな季節かぁ。
「あら、長野さん。エントリーするつもりなの? うちの成宮ナコに負かされて恥をかきたくないのなら、出場しないのが身のためなんじゃないかしら? オホホ…」
ユキがお嬢様ふうに笑う。
リカとマユも一緒になって「オホホ…」と笑う。
ちょっとみんな悪ノリしすぎ…って。
もしかして、私それに出るの?
「ふふっ、ホエヅラかくのはどちらかしらねぇ…。では、ごきげんよう」
長野麗子がそう言い捨てて去る。
新体操部の取り巻き数人も口ぐちに「ごきげんよう」と言い残して去っていった。
…
「ナコやるわよ!」
ユキが私に向かって拳を握りしめガッツポーズする。
「え…ミスコンなんて…。わたし無理だよ…。無理ムリ!」
私は焦って、手と首を横に振る。
「たとえ、無理でも…女には戦わないといけないときがあるのよ!」
「そうよ! ナコには私たちがついているわ。頑張りましょう!」
リカとマユも口ぐちに私を励ます。
ていうか、長野麗子の影響力すごい…。