第12章 僕のミス藤城
「成宮先輩!」
放課後、部活が一息ついて休憩中、手洗い場で一人で手を洗ってると、青いネクタイの男子が声をかけてきた。
一年生で運動部じゃなさそうだから、全然知らない子だけど、何の用かな?
私は首にかけたタオルで手を拭きながら、彼に向き合う。
彼はポケットから半分に折りたたんだ封筒を出す。
そして、まっすぐに伸ばしながら私に差し出す。
これはっ…ラブレター?
わたしの人生2回目の、男子からのきちんとしたラブレター?
「僕の気持ちを手紙に書きました…。受け取って下さい…」
1コ下の真面目そうな男子が、恥ずかしそうに手紙を掲げて、頬を染めている。
私の胸は少しときめいてしまう。
でも…
「あ、えっと…。ありがとう。でも、その手紙を受け取る前に言っておいた方がいいかな…。わたし、彼氏いるよ?」
私がそう言うと、彼は少ししょんぼりしつつも、顔を上げて続ける。
「それは…なんとなくわかってました。でも、気持ちだけでも伝えたくて。迷惑でなければ受け取って下さい!」
一生懸命にしゃべる彼。
「迷惑だなんて…」
私が手を差し出そうとすると…
「はいはい、ごめんねー。
やぁ、ナコ。もうすぐ部活の終わる時間だね?」
突然、紘夢が現れた。
「あ…紘夢はもう終わったの?
あ、この人、さっき言ってた彼氏…」
私は一年生男子に説明する。
「あ…そうなんですか…」
ちょっと、あぜんとしてる。
「うん。そういうことだから。その手紙は君の胸の中にしまっておきな」
紘夢がにっこり微笑んで、彼が差し出していた手紙を、手でグイグイ押し戻す。
「はい、わかりました…。失礼しました…」
一年生男子はトボトボと去っていった。
背中が寂しそう。
「別に受け取るだけならよかったのに…」
私は紘夢に言う。
「駄目だよ。ほんの少しでも縁が出来てしまう。いまどきラブレターなんて書いてくる男…。思いつめたら何をするか、わかったもんじゃないよ?」
紘夢がとうとうと力説する。
それ…自分のことだよね?