第1章 999回目の失敗。
美風藍は部屋にある水槽をじっと眺めていた。
「あの…。」
私が話しかけると、
彼は無表情でこちらを見た。
「…君は…真城柚子だね。今回の映画の主演。」
「はい。よろしくお願いします!」
私が頭を下げた。
「うん。よろしく。あのさ、僕君に聞きたいことあるんだけど。」
「はい?」
私が顔を上げると、
相変わらず美風さんは無表情で私を見つめて居た。
「君さ、なんでこの映画の主演なったの?いくつか動画見せてもらったけど演技下手だよね?コネか何か?」
美風さんは無表情で淡々とそう言った。
あまりにはっきり言われすぎて、
私は絶句してしまう。
「み、美風先輩!」
美風さんの傍に立っていた女の子がすぐに、
美風さんの口を押さえる。
「す、すいません!悪気はないんです!」
彼女は必死に頭を下げる。
「ちょっと、春歌。なんで謝るのさ?僕は聞きたいことを質問しただけで…」
「うわぁー!何でもありません!気にしないで下さい!」
彼女は再び美風さんの口を塞ぐ。
「…あ…はい。」
私が頷くと、
彼女は嬉しそうに笑った。
美風さんは不満気な表情をしていた。
「あ、あの!私…な、七海春歌と申します!こ、今回この映画の曲を作らせていただきます!よ、よろしくお願いします!」
そう言って彼女は丁寧に私に頭を下げた。
「あ…真城柚子です。」
私も頭を下げかえす。
「あ、あの!わ、私!真城さんの歌!す、好きなんです!」
彼女は私の目をじっと見つめた。
「…ありがとうございます。」
思わず嬉しくなって笑ってしまった。