第1章 999回目の失敗。
「…あ。」
会場がいっきにざわつく。
全員の視線の先にいるのは…
シャイニング事務所の
"美風藍"だった。
シャイニング事務所は大手の芸能事務所で
美風藍はその中でも今、特に注目されているアイドルである。
「…実在したんだ。」
私は思わず、マネージャーに耳打ちした。
そう。
楽曲もネット配信のみで、あまり姿を見せない事から
彼は実在しないんじゃないか?と言われていたほど
ミステリアスな存在だったのだ。
皆の視線の先で
美風藍はニコっと笑った。
「皆さんこんにちわ!美風藍です!この度はよろしくおねがいします!」
可愛い見た目とは裏腹。
彼はしっかりと挨拶をした。
会場中から拍手が起こる。
…やっぱり大物は違うなぁ…。
それが私の彼への第一印象だった。
それから
スタッフ顔合わせ、同時に打ち合わせが終わると、
親睦会という名目で軽い立食パーティーが行なわれた。
私はマネージャーに促され、
美風藍に話しかけることにした。