第2章 初めてのキス。
撮影終了後、
明日の撮影スケジュールの確認の時だった。
何やらスタッフや監督が慌しくしていた。
「柚子ちゃん、藍ちゃん、実はちょっとこっちの手違いがあって、明日の撮影でラストシーンを撮ることになった!」
監督が慌しく、私たちにそう言った。
「へ?」
ラストシーンは、
満月の夜に湖のほとりでキスをする…
というシーンだった。
「満月はCGじゃなくて、生で撮りたいんだ。満月は明日と、クランクアップ直前しかない。幸い明日は晴れ。だから明日のうちに撮って安心しときたいんだ。」
監督は頼むっ!と私達に頭を下げた。
「…かまいませんよ。」
美風さんはクールにそう言い放った。
監督の視線が私に向けられる。
「…あ…はい。大丈夫です。」
私もその場の空気で了承をした。
「ありがとう!まぁ、明日失敗してもまだチャンスはあるし…最悪CG使うから気楽にねっ!」
監督はそういうと、
嬉しそうにその場を後にした。
美風さんはスケジュール確認が終わると、
すぐにその場を後にした。
私は一人で心臓をバクバクとさせていた。
そう。
私は…
今まで一回も…
キスをしたことがないのだ。
思わず緊張から大きく溜息がもれる。