第2章 初めてのキス。
「ねぇ、この役は君にとって難しい?」
美風さんは相変わらずの無表情で唐突にそう聞いた。
「…そうですね。感情がないっていう感覚がわからないですから…やりにくくはあります。」
私がそういうと、
美風さんは不思議そうに私を見つめた。
「感情を失くすってそんな難しい事?」
…もしかして、
ダメ出しされているのだろうか…。
「…うぅ。はい。私にとっては難しいです。」
「そうなんだ。僕は逆だな。感情って概念がわからないから…この役は難しいよ。」
美風さんはそういうと溜息をついた。
美風さんなりのジョークなのだろうか…?
「僕達は逆だったら上手く行っていたかもしれないね。」
そう言って美風さんは静かに笑うと、
席を立った。
…
…
…
あれ?
やっぱり演技力に関して
ダメだしされた!?
それってつまり、
"僕だったらもっと上手くやる"って意味?
なんだかモヤモヤしたまま
撮影が終了した。