第5章 理事長と対面
特別な立ち位置だと理解できたら偽りで並ぶのに申し訳なくなる。
きっと簡単にこの制服を着ることはできないのだろう。
たとえ嘘でもせめて彼らに恥じないようにしよう。
手に持った制服を握り締め雪は一人決意した。
「では、雪ちゃんは着替えてくれ。翔くん更衣室案内して、終わったらそのまま職員室へ行ってくれ。桐野先生に頼んであるから。・・・よろしくね。」
「はい、西條理事。失礼します。」
「ぇ、っ失礼します!」
昴の言葉に翔は頷くと雪の手を掴んでドアへ歩き出す。
雪は慌てて挨拶をし、引っ張られるまま部屋を出た。
2人がいなくなった部屋で零は父親に詰め寄る。
「父さん。確かに昨日の話し合いで各地を回るってなったけど何も執行部に入れてレガンスを鍛える必要なんてないだろう。」
「そうかもな。だが前ラーチアの件もあるからな。彼女がこの地に降り立ったのも何かの運命。
零。木下雪が西の地にいる間に彼女をモノにしろ。今後の聖戦に彼女は有益だろうからな。」
「...それが本来の目的か。」
吐き捨てた零の言葉を昴は笑顔で返し「下がれ」と部屋から追い出した。