第6章 西聖院学園と制度
大きなテラスを抜けると壁がガラス張りになっている職員室についた。
出勤したばかりの教師達がチラホラとガラス越しで飲み物を飲んでいた。
翔は雪の背中に手を添えて中に入った。
「西原先生。」
翔が目的の人物に声を掛けると中にいた職員がチラチラと雪を見た。
「おぉ、東條。ありがとう。」
「いえ。」
翔が声をかけた西原先生と呼ばれた人物はまだ若く20代半ばあたりにみえた。
朝にふさわしい爽やかな笑顔で振り返り雪を見る。
「話はいろいろ聞いているよ。俺は担任の西原だ。生徒会執行部の顧問も務める。・・・君のレガンス専任指導を担当することになっている。」
最後だけ小声で言うあたり、いろいろと含まれた部分には情報の書き換えなどのことを指しているんだろう。
「雪です。本日からよろしくお願いします。」
「あぁ、よろしくな。」
社交辞令の笑顔と言葉を交わし雪は耳を澄ませる。
「あの子ラーチアの加護を受けたっていう…」
「ラーチアは何を考えてるのかしら。」
「Sランカーでしょ?前代未聞ね。」
やはり先生の方でも情報が錯乱としているのかヒソヒソと話が交わされる。
雪は聞こえないふりをしつつ、虚偽の生活を送るための周りの認知度を図っていく。