第5章 理事長と対面
零が無言のまま前へ進んでいくので少し頭を下げてから背中を追う。
そのまま机の前まで進み2m程間隔をあけて止まった。
言われたとおりに隣で止まるとさらに隣に智明、悠と続いた。
零は横目で全員並んだことを確認すると左手で拳を作り右肩にあてた。
雪が?マークを浮かべるよりも早く智明と悠も零と同じポーズをした。
もしかしてジーノ流の敬礼なのかも。
そう理解しても下手に真似できないので居心地悪く肩を竦める。
机の向こう、見ただけで上質と分かる椅子に座った男性が右手を零達にかざせば3人は敬礼を解いた。
「早くにすまなかったね。」
「いえ、お待たせしました。」
「うむ。・・・彼女が?」
「はい。」
男性の目が緩やかにこちらを向いた。
零のお父さんだから同じ厳しい目をしていると思ったが、どちらかと言えば悠と同じ目をしている。
背を伸ばし口元に弧を描く。
「はじめまして、雪と申します。」
「話は聞いているよ。ようこそ、ラーチアの加護を受けた少女よ。」
お父さんも目元に皺をつくり笑ってくれた。
緊張が少しほぐれた。