第4章 立場と強さ
「んんっ、ゴホン。」
少し離れたところで美鈴が居心地悪そうに咳払いした。
智明と悠は同時に「そういばまだ居たんだ。」と思ったが口にはせず目線だけ向ける。
雪は悠が頭を固定しているので顔を上げれず、今の状況を客観的に考え顔を赤くする。
「帰るわ。長居してごめんなさい。」
「いえ、こちらこそ今日はありがとうございました。」
爽やかな笑顔を向ける智明に呆れながら美鈴は気の毒な雪を見る。
「それと、部屋なら葵くんの部屋にしたら?彼今日帰ってこないみたいだし。」
「あー。」
「葵の部屋があったなぁ。」
2人して残念そうな声を出しながら雪を解放する。
よく分からないが美鈴の提案で助かったようだ。
「大変ね、雪ちゃん。」
「いえ。ありがとうございます。」
美鈴は華のある笑顔を向けられ男2人が取り合う気持ちが分かった。
これは惚れるわ。
「またね、雪。」
雪ちゃんから雪へ呼び名を変えても雪は気にしないで「はい。」と返事をする。
美鈴は満足気に笑うと寮を出た。