第1章 私と幼馴染
1コールですぐに応答があった。
「はい。瀬口家でございます。」
「怜音です!すみません、俺の不注意で由樹がいなくなってしまったんです。大きな風が」
「申し訳ございません。あなたの名前にも由樹と言うお方も存じ上げておりません。」
言葉の最中に遮られ、「知らない」と言う執事であろう電話相手に怜音は立ちくらみそうになる。
「え、あのですね。瀬口家の令嬢の由樹さんについて電話したのですが・・・。」
「確かにここは瀬口家でございますが、当家に由樹さんというお方はおりません。失礼いたします。」
ツー。ツー。
怜音は携帯をおろしカメラフォルダーを開く。
由樹と撮った、由樹が写った写真が見たかった。
「なんで、ないんだよ。」
スカスカになったフォルダーを眺めながら頭が真っ白になっていく。
履歴にもメールにもどこにも由樹はいなかった。
さっきまで隣にいたはずの由樹を思いながらも怜音はあまりの出来事に意識を失った。