第1章 私と幼馴染
慣れた道を眺めながら2人は他愛もない話をする。
「専属コックが昼時間になったら料理を届けに来る光景ってほんと異常だと思う。しかもクラス半分以上。」
「ね~。私は学食派だからあんま見ないけど、たまに見ると皆さん本当にお金持ちなんだって再確認しちゃう。」
うんざりと言う怜音に雪は笑って同意をする。
一般人の怜音からしてみたら一食3,000円はかかる学食を毎日食べている雪も異常だったが口には出さなかった。
雪は怜音の家に行けば見切り品のものだって普通に食べる。
地面に落ちた菓子を「三秒ルール」と言って食べる。
虫も怖がらないし、地べたにだって座る。
お嬢様なのにそれを鼻にかけず怜音の感性を共感するのが雪だった。
けれど、それは怜音の前だけで一度公の場に出れば礼儀を弁え自分の行動を冷静に判断し行動をする。
「雪って生きるのうまいよね。」
「え、どういうこと?」
「ン、別に。」
俺の前だけ本当の雪で、俺の前だけ繕わない。
雪は俺を惹きつけるのがうまい。
頭に浮かんだ想いを逸らすようにそっぽ向く。
「怜音くーん?」
問い詰めようと雪は怜音の肩に手を伸ばした。
肩に手が触れる寸前、大きな風が吹いた。