第1章 砂浜に流れ付いた者
「竜医さん、この人は大丈夫なの?」
「タケル、さっきもいったけど、私はあくまで竜のお医者さんですよ」
「でも、心配なの!」
うっすらとした意識で会話が聞こえる。どうしたんだろう、ここはどこだろうか。
「発熱以外に悪いところは見られませんから、おそらく漂流による疲労と体温低下による風邪だとは思います。でもタケル、ワタシは竜のお医者さんですから、確かなことは言えないんですよ」
「きゅー……、でも心配なの。この人、なんだか持ち主さんにすっごく似てるの、他人の気がしないの」
「通信機じゃはっきりと姿は見えないけど、確かに似てるとは思うよ」
「竜医さんもそう思うの!」
「まあね」
タケル、タケルって、それは私の可愛い仔竜の名前。いいや、よくある名前だよね。でも持ち主さんって呼ぶのは、そんなにないよね。
いいや、夢だよ。レム睡眠だから身体も動かないんだ。
でもなんか起きれそうだ、目が開くみたい。
「あっ、起きたの!」
すぐ横に幼い竜の顔があった、知らない天井とよく知ってる顔。タケル。
「大丈夫? いたいとこのないの、へいき?」
「あ、意識が戻ったんですか」
ひょっこり顔をのぞかせたのは、緑のモフモフした、ツノの生えた竜。竜医さん。
ヤベェ、ハーレムじゃん。身体重いけどいい夢見れたからいっか、しあわせしあわせ。
「目の色が持ち主さんといっしょ……きゅうぅ持ち主さんにあいたいの、持ち主さん……」
あれ、タケル泣いてる?
ああ泣かないでタケル、そんな選択肢選んだ覚えないよ、たとえゲームだとしても悲しませたくないんだから。
「タケル泣かないで……」
「にゅ!?」
「なるべくね……会いに行くから……」
「きゅ、きゅう?! 持ち主さん? 持ち主さんなの!?」
「うんうん持ち主さんだよ……」
うんタケル、テンパるのはいいけど、私の身体揺さぶるのやめてくれないかな、君もうレベル幾つだよ。すごい揺れてるよ。
「あ、合い言葉、合い言葉いって欲しいの、持ち主さん!」
「合い言葉……合い言葉ね、うんリュヒト〜」
「きゅううううぅぅ〜〜!!」