第1章 砂浜に流れ付いた者
「しかし、10年くらいなら、地球の人類は短くても60歳までは事故などがなければ生きていますから、きっとその人も、まだ亡くなってはいないと思います」
PCの都合から、私はプレイはしていない。しかしだいたい内容は知っている、竜死病と戦いながら、孤竜との友好度を上げ、ラスボスを倒すゲーム。
「竜医さん、無理しないで下さいね。あなたが里親の方と逢える確率はゼロじゃない、でも里親の方もあなたに無理はして欲しくない、そう思っているでしょう。あなたとその方の関係は、私とタケルの関係によく似ている。私なら自分の事を忘れてもタケルには幸せになって欲しい、そう思います」
嘘をつくコツって知っているかな、嘘をつくためには、日頃真実ばかり述べるんだ。偽りなく、清廉潔白に、真摯に話せばいい。そして必要最低限の嘘を混ぜる、ピンポイントに、違和感なく、真実の顔をさせるのだ。
ほんのりと涙ぐんでいる竜医さんの目を真摯に見つめて、微笑みを浮かべながら言った。
「ですから竜医さん、そんなに焦らないで、きっとあなたの大切な人は、今もあなたを大体に思っているから」
はい、嘘ついた。
だって、
「たかがゲームの内容を、覚えてないだろうよ」
なんて、言いたくなかったから。
ほんのちょっと、嘘をついた。