第2章 幕開け
「アイト団長!」
突然、路地の脇から声が聞こえた。
反射的にそちらに構えた。手に何かを掴む感触がある。
手に持っているのは…剣? 薄平らな刃と、変わった形の柄。良く見ると二つのトリガーが付いている。
これ…確か巨人討伐で使っているやつだよな。
何で街中で俺はコレを持って血塗れでいる?
…あ、そうか。俺、巨人討伐したんだ、きっと…。
いや、待て。街中で?
一巻で確かにそんなシーンあったけど、確かさっき…
「アイト団長…? あの、大丈夫ですか?」
やはり…俺の事を団長と言っている。有り得ない。確か団長は『エルヴィン』という正規のキャラが団長のはずだ。
「あの…アイト団長。宜しかったらブレードを下ろしてもらえませんか…?」
アイト「……え?」
路地から出て来た声の主はゆっくり近づきながら、何かに怯える様にして此方へ声を掛けた。
アイト「あ…悪い」
ブレードを腰にあるストック部分に入れ、ホッと安心する人物。
全身を黒いローブの様な物でまとい、顔もフードで隠されているせいで表情はよく見えない人物が二人。
「いえ…。未明からの作戦でしたし、今回は対象が多いのもあって少々無理なされたのでは?」
アイト「いや、大丈夫だよ」
いかん、二次元の明晰夢は久々なせいか、イマイチ状況を把握できない。
「そうですか…。しかし、無理はなさらないで下さい。死体はこちらで片付けますから」
アイト「あぁ………あ?」
死体? あぁ、巨人のか。
アイト「なら頼むが、あんなデカイの処理できんのか?」
軽くハハッと笑うと、
「大丈夫ですよ。多少太ってますが人間には変わりありませんから」
ローブの人物も軽くハハッと笑い返した。
アイト「…………………え?」
「では、お疲れ様でした。後は我々が引き受けます」
ローブの人物は右手で拳を作り、自分の胸に当てると俺の前から横を通り、出てきたのとは別の、この舗装された道を挟んで向かいの路地へと入っていった。
ちょっと待て。
人間? 人間って言ったか?
そうだ、巨人がいたのならもっと多くの兵士が居るはず。
それに犠牲者も。
じゃあ…まさか、
俺は恐る恐る、ローブの二人が入っていった路地へと振り返った。