第7章 幼馴染と同郷組 by,幼馴染
広い浴室。
一人で入るのは大きすぎる浴槽。
それもそうだ。来客用とはいえ大きさは大浴場そのものだ。
10人以上で使う事を前提にしているはずの大きさの浴場に渡し一人しか居ない。
いや、さっきまではもう一人いたんだ。
そんなもう一人は気を遣って出て行ってしまったんだが…。
別に気にしない。そうは言ったけどやはり今考えるとお互い服を着ていない状態でいるのだから冷静に考えると凄く恥ずかしい…。
肩まで湯に浸かり、彼の事を思い出す。
アイト…。今は隼人か。
信じるといった矢先にこんな事言うのも失礼かもしれないけど、やっぱり信じられるような話じゃない。
此処が夢の世界。彼、隼人のいう漫画の世界だというなら、私達が歩んできたこの人生は人によって作られた世界という事なのか?
いや、違う。私は…私の意志でこの道を歩んできた。
でも、彼の話は信じられないが彼の言葉には何故か信用出来る重みがあった。嘘言っているように聞こえなかった。
……仮に、もし仮に私が彼の夢の中だけの人間なら私はこれからどうなる? 彼が出てきた事で私のこれからの人生が変わるんじゃないのだろうか。
なら、彼が出てきた事で彼に関わる事になる人間の人生は大きく変わってしまうんじゃないか。
それこそ最悪のケースで言うなら死ななくて良い人が死んだり…。
なら、
被害が大きくなる前に今消してしまえば…。
何を考えているんだ、私は。
彼を信用すると言ったばかりじゃないか。それに中身が隼人だとしても肉体そのものはアイトなんだ。私達の大切な同期で…私達を助けようとしてくれている。
それに、彼も私を助けてくれた。
戦闘慣れしていない私を庇って今日助けてくれた…。
…あれ?
何で隼人は私を助けた?
彼にとって私は部下かもしれないけど同期でも友達でもない。
ただの部下なのにどうして身を挺して助けてくれたの?
先日からそうだ。何処か違和感はある。でも今までのアイトと被る所も沢山…いや、殆どだ。
被り過ぎていたからこそ普段見せない違和感が余計に変に感じたんだ。