第5章 役目
アイリス「っていうヤンデレ風にアイトさん達が出張中やっていこうと思うのですが」
アイト「紅茶飲んだら部屋帰って寝ろ」
アイリス「私の一生懸命の思いなのに…もういい。アイトさんにその気が無いなら…殺して私も死ぬ」
目から光が無くなったアイリス。ヤバイデス。
アイト「ヤメテクダサイコワイデス」
アイリス「えへへ。夕飯のときのお返しです♪」
まさかあの時分かって乗ってきたのか。
アイリス「あはは…でも。アイトさんが私を後方支援にした時、嬉しかったんです。…あの時久々に笑った気がします。トロストに行くのは今でも怖いです。前の私を思い出しそうで…。ごめんなさい」
アイト「俺も少し考えが浅かった。こっちでの業務は任せやよ」
隣に座るアイリスの頭にポンと手を置き、昼のように優しく撫でる。
えへへ、と嬉しそうな笑顔をこぼすその顔はまさしく普通の女の子だ。
アイリス「あの…アイトさん。こんな事今更かもしれないですけど、……きつかったら代わっても良いんですよ。無理しないで下さい」
この子は本気で心配している。そして、俺が殺しの担当を代わって欲しいと言ったら本当に代わるつもりなのだろう。
今の俺にこのアイトが何を思って彼女の才能を殺してまで後方支援に回したのかの真意は分からない。
だから、これは俺が同じ状況になった場合の隼人の考えだ。
アイト「スキルが高いのは納得だけど精神壊すような業務に女の子を置くわけに行かないだろ」
それを聞いたアイリスは長い沈黙の後、ゆっくり向き合っていた俺の胸中に身体を預けて埋もれた。
凄く恥ずかしいけど、此処は我慢だ。
アイリス「…ありがとうございます。私って臆病なんです…。笑っていないと自分は壊れそうで。せめてアイトさん達のサポートが出来たらなって…」
アイト「十分伝わってるよ。大丈夫」
アイリス「…本当にお兄ちゃんみたいです」
俺の胸に顔を埋めたままアイリスは言葉を続けた。
アイリス「トロストの憲兵達はこちらよりも質が悪いです。リックも…貴方も気を付けて下さい」
そして再び長い沈黙が訪れた。
アイリス「……すぅ…すぅ…」
いや、そのまま抱きつくような形で眠ってしまっていた。