第5章 役目
あんな事と言うのはウェンの言っていた二年以内に俺が変えるという発言の事だ。
俺じゃなくてアイト・レオンハルトの言った事だとしても流石に申し訳ない。
ゲルハルト「気にすんなって。何もアンタ一人の力で俺達の冤罪を証明してもらおうとは思わねぇよ」
アイリス「ですです! 私達も尽力して憲兵団を黙らせて見せますよ!」
直訳すると気合十分のようです。アイリスは相当根に持っているようです。
アイト「ありがと…。向こうの連中には俺達の部署の事は伝えてないらしい。だから一時的に憲兵団に戻る形になるな」
アイリス「それでストヘスの憲兵団に手柄横取りされたらどうします?」
俺はアイリスの質問に笑みを浮かべ、竈を指差して言った。
アイト「そこに入れるか、刻むかだな」
キョトンとした様子だったが、先程の自分の発言を思い出したのか、何時もの様に笑顔で笑ってくれた。
ゲルハルト「はは、ま、その意気ならきっと大丈夫だろうな。――――さて、飯も食ったし準備するか」
アイリス「準備って?」
ゲルハルト「アイトの準備の手伝いだよ。お前はリックの手伝いでもしてきな……ってまだ帰ってきてないのか」
アイリス「あぁ、成程。じゃあ、ご馳走様でした。片付けはしておくのでアイトさんは準備して来て下さい」
キッチンから出て必要最低限の物を整理して支給されたバッグに詰め込んでいく。
ゲルハルトの手伝いもあり、ものの20分程で終わった。
その頃には双子兄妹も帰って来て、アイリスから二人に事情を説明した。
二人とも了承し、本来の職務外の事に文句を垂れつつもリックの方は少し嬉しそうだった。
ゲルハルト「よし、整理はこんなもんか…。あぁ。後、頼まれてたもの出来たぞ」
そう言って一度部屋から出て行ったゲルハルトは少しして戻ると、手に細長い包みを持って帰ってきた。
ゲルハルト「今朝間に合わなくてな。任務に支障きたしてないか不安だったがまぁ良かった。ほれ」
そう言って包みを解いて中から顔を出した物にオレは一瞬だけ驚かされた。
黒基調の鞘、それに細く赤い線が刻まれ、血を吸ったように赤い柄巻き。この世界に不釣合いな代物だった。
アイト「日本刀…だよな」