第5章 役目
支部前に居た憲兵に冷ややかな視線を頂きつつ、それを無視して中に入ろうとした時、ふと、一箇所だけ他の部屋より窓から明かりが零れている場所があった。
俺達の部屋じゃない。そしてメンバーの部屋でもない。
賑やかな声が聞こえてくるようだし、個室ではないようだ。
アイリス「また馬鹿騒ぎしてますねぇ。憲兵の人達」
アイト「あそこの部屋って…」
思わせぶりに発しておいて後はアイリスの出方を伺う。
アイリス「えぇ。憲兵団の食堂です。食料盗まれた事に気付いてないんでしょうかね? あの人達はお酒があれば良いみたいね」
ほら言った。あれは憲兵団の食堂か。
アイリス「お酒さえ盗まなければ食料ブンどってもいいんじゃないですか?」
アイト「程々にな」
アイリス「お酒じゃないんですから」
アイリスの言う食料保管庫の前を通り過ぎ、そのまま団長室へと足を運んだ。
アイリス「人数減ってなかったら食堂も使えたんでしょうけどねぇ。アイトさんの部屋にDKがあったのが幸いです。アイトさんの料理の腕も分かりましたし、これからは外食せずに済みそうです」
アイト「オレは料理人か―――――開けて」
アイリス「朝と逆ですねwwざまぁw」
アイト「俺の気分でアイリスの食事の量が変わる」
アイリス「おかえりなさいませーご主人様」
朝と立場が逆の状況だったが、戦況は常に俺の味方だ。
暗い部屋に明かりが灯り、キッチンに買って来た食材を運ぶ。
昼は余裕があったから時間掛けたが、夜は簡単なスープとパンで済ませる。
パンも最初から焼かれたパンを買って来た。
アイリス「よし、やりますか!」
アイト「あれ、手伝ってくれるの?」
隅に掛けてあったエプロンを結んで気合を入れるアイリスに少し驚かされた。
アイリス「花嫁修業です!」
アイト「先に貰い手を見つけろ」
アイリス「アイトさん貰って下さいよ」
アイト「俺の嫁になる人は寝てる時に寝ぼけて旦那の指をしゃぶったりしない」
アイリス「ちょっ、私そんなことしてたですか!?」
テンパって言葉がおかしな事になっている。いやまぁ嘘なんだけど、こんな反応されたら俺の中の何かがウズウズしだしたんですが…。