第5章 役目
夕方。
さっきまで夜だったのもあって夢の中独特の違和感を感じつつも、アイリスを起こして夕方の市場に出た。
流石に何度も食料庫から盗みに掛かるのは気が引ける。
アイリス曰く、一応俺達用の食料保管庫もあるらしいが、扱いが扱いだけに中身は入っていない。そして、たまに買ってくると翌日には盗まれている事もあり連日外食ばかりだった故、昼の昼食は尚更楽しかったという。
この子は一を聞くと四も五も教えてくれる。一ヶ月同じ生活をしていたはずなのに不審に思わないのですかね…。
アイリス「食料庫対策はどうにかしないとですね」
アイト「だな。トラップでも張るか」
いいですね! と賛同するアイリス。盗んだのは間違いなく憲兵団の人間だろうから仕返ししたいとでも思っているのだろう。
二人は日が傾いて影が大きく伸び、背の高い建物が別の低い建物を影で覆ってやや薄明かりな市場のある広場に足を運んだ。
そこで、ちょっと思わぬ二人に遭遇した
ウェン「あ、アイトさん」
リック「今から帰りですか…?」
双子兄妹だった。
アイリス「うん、これから夕飯の材料の買出し。取り敢えず今日分だけど、備蓄は保管庫の鍵の改良してからね」
ウェン「それなんですけど、」
リック「私たち、工作とか得意なんで…だから」
ウェン・リック「「諜報部の人以外は開けられないようにトラップ付けようかと思うんですが…」」
双子のシンクロ率がヤバイ。
そして皆考える事が一緒である。
そういえば学校のクラスにも双子兄妹がいるけど、あいつ等もよくシンクロするよな。
ウェンとリックは外で夕食を済ませてくるという事なので三人分の材料だけ買って支部に戻った。
アイリス「ゲルハルトは結局一日支部に居たんですかね」
アイト「チェスで負けて血を吐くヤツなんて初めて見た」
アイリス「え? 以前アイトさんに大敗してクイーンとナイト抜きのハンデ戦で負けた時も倒れましたよ」
アイト「………。あぁ、そうだった」
アイリス「………」
そんな事があったのか。アイリスは少しの沈黙の後ニコリと笑ってその時のゲルハルトの話を面白おかしく話し出した。
陽も落ちて家々に明かりが灯され出した頃、支部に到着した。