第5章 役目
心地良い風が身体に当たる。
耳には部屋で鳴り響く秒針の音ではなくざわざわと木々が擦れ合う音と水の流れる音が入ってくる。
あぁ、戻ってきたのか。
ゆっくり目を開けると、其処は公園の一角だった。
中央に噴水のある、整備された綺麗な公園だ。
ぼんやりしてると、良い匂いで鼻が満たされた。
視線を少し下に落とすと、肩に掛かる程度の金色の髪をした少女が自分の胸の中にいる。
香りの元はどうやらアイリスの様だ。
完全に夢の続きか。
アイリス「ん・・・ん~・・・」
起きたかな・・・。
アイリス「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
起きる様子はなさそうだ。
あれからどれ位時間が経ったのか分からないが、少なくとも最期に見た時より日は傾いている。
夕日までは行かないが後二時間もすれば夕刻時だろう。
現実世界で起きた不可解なことも気になる。
しかし、折角この世界に飛び込んだんだ。
今は夢の中を堪能しよう。
そういえば今回の夢は妙に生々しいせいか。起きた時の疲労感が全くなかった。