第2章 幕開け
アイト「あぁ…あれ、お前等は?」
別の資料に目を通す。商会の脱税に関する資料だ。
アイリス「アイトさんと一緒ですよ。私達は容疑者でも憲兵団でしたからそっちに従事してました。私もリック達も元は分隊長クラスの指揮権はありましたから、避難誘導してました」
アイト「で、それを終えてからこっち来たのか。犯罪者が兵士を指揮するってのもシュールだな」
アイリス「ブーメラン」
アイト「ごめんなさい」
アイリス「それに私、冤罪ですよ! リック達も濡れ衣ですから」
成程、それで素直に憲兵の業務に従事したのか。
投げ出したら犯罪者だから、と言われても仕方ない。
しかし、情報漏洩…あながちこの子の場合有り得るから困る。
アイト「でも、結局こっちに送り返されたのか」
アイリス「ブーメラン」
アイト「ごめんなさい」
キッチンから二度目のブーメラン論法によってダメージを受けた。
それにしても、随分時間が掛かっている気がする。
まぁ、良いか。
それはそうと、先程から目を通していた資料を見て溜息しか出ない。
中央に住む随分と上流階級であろう貴族や、商会のボス、これ等の悪行がごろごろと報告されている。
しかもそれを裁くならまだ納得だが、主な仕事がその不正事実隠蔽の工作だったり、内密者の暗殺だったり…。確かにヤバイ橋だ。
貴族連中は分からないが、大方商会は不正を見逃して貰う代わりにかなりの額を上層連中に積んでいるだろう。
賄賂ってヤツだ。
母さんも言っていた。現代の警察官もそういった贈収賄がよく行われては闇に消える、と。
どの世界でも考える事は一緒か。
……もしかして、アイリスの行おうとした情報漏洩ってこういった不正事実だったり?
余計な詮索は辞めよう。
陽が昇り始め、座る椅子の背後にある出窓から朝日が徐々に差し込み、灯りを灯していた部屋内に日が差し込む。
出窓から差し込む日はどんどん伸びて行き、最終的には一番奥、部屋の扉の足元まで照らして伸びていった。
日当たりも良好な部屋なんだな。