第3章 日常
ゆらゆら、時々ガタガタと上下左右に揺れる。
丁度いい揺れ具合に、眠気がまたも襲ってきた。
昨夜の総会、リクオの三代目にはならないと宣言したせいで、一部の妖怪たちがリクオになにがあったのか、と疑問に思った。
その頃亜弥は丁度風呂に入っており、上がった途端に事情を聴かれ「ああ、まあそうなりますよね・・・」と溢し、なにかを知っていると思われてそのまま根掘り葉掘り事情聴取を受けて日付が変わる頃に漸く解放されられたのだった。
ただでさえ最近は、眠気が前より増してきているのだ。
風呂から上がってすぐに、少なくとも日付が変わる前には布団に入ろうと思っていた。
そのせいもあって亜弥は今日、休憩時間はおろか授業中にも眠るといった行為をしてしまったのだった。
「…ふわぁ…(…少し…少しだけ、寝よう…)」
幸いにして、これはいつもリクオが乗っているバスだ。
彼のことだから起こしてくれるだろう。
そう思いながら、いつも以上に重たく感じる瞼をゆっくりと閉じた。
***
ズドドドド!
耳をつんざくような轟音がした。
と同時に体に強い衝撃を受けた。
夢も見ない程深い眠りについていた亜弥も一瞬で目が覚めた。
にも拘わらず、周りは暗闇に包まれていた。
「…なに…、ッ…!」
起き上がろうとした時、足に鋭い痛みを感じた。
携帯電話で足を照らすと、靴下の上からでも分かる程腫れ上がっていた。
周りを照らすと、大きな岩石から小石まで転がっていた。
「あ!こっちにもいた!」
懐中電灯だと思われる光が自分を照らした。
誰だろうと光の元を見ると、リクオと同じくらいの背の茶髪の少女だった。
「大丈夫ですか?」
彼女は土埃などで少し汚れているが、挫いたりなどといった大きな怪我は見られなかった。
「…ええ、大丈夫。足を挫いただけ」
「大丈夫じゃありませんよね!?」
ぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。
足場が悪いから転ばないかと見当違いにもひやひやしていた。
「そこまで酷くないし、歩けない訳じゃないよ」
「でも、」
ガラガラ!真横から岩が崩れ落ちた。
上を見やると、今にも落ちてきそうだった。
危ないな、そう思っていると
「こっちに来て下さい!」
彼女は亜弥の手を引っ張った。
そのまま早足で、負担にならないように来た道を戻った。