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陰陽師と半人魚

第3章 日常


彼女、家長カナに連れられて来た場所ではバスが横転してた。

どうやら亜弥は一番奥にいたせいで、車体から投げ飛ばされたようだった。

運転手や子供達は幸運だと言っていたが、自分はまるで反対の、不幸だとしか思えなかった。

「…化け物、…なんだ…」

ぽつりと呟いた。
足を擦るともう腫れは引いていた。歩くのにもそう困らなさそうだ。

「…」

いけない。考え過ぎるとまた、自分が自分ではなくなる。

そう思い、別のことを考えようと携帯を開いた。

17時前と表示されていた。時間からして、もうすぐ警察が来るハズだ。

来たらスグに逃げよう、そう算段していたら清継、とカナに呼ばれていた男子が「ヒッ!?ど・・・どなたさまですかぁー!?」と悲鳴に似たことを叫んだ。

清継たちの方を見ると懐中電灯で照らされた、昨夜見た妖怪の、ガゴゼ会のモノたちがいた。

「(ガゴゼ会?・・・何故、ここに・・・)」

子供たちを狙ってこのことを起こしたのはまだ分かる。
だがこのバスはリクオが、初代の孫が乗るハズだったのだ。

それを狙って起こしたということは・・・つまり・・・。
亜弥の頭にある疑問が過った。

「・・・ここにいる全員・・・【皆殺し】じゃ。若、もろともな・・・」

疑問が確証に変わった。
ガゴゼ会はリクオを抹殺して三代目を我がモノにしようとしているのだった。

つまり彼らは裏切りモノで、

「―――悪い、妖怪・・・」
「よ、妖怪・・・ッ」

清継が叫ぶと同時にガゴゼ会のモノたちは彼らを襲始めた。
辺りは阿鼻叫喚で包まれた。

反射、だった。
彼らを庇うように立ち、【畏】を放ったのは。

「!?・・・お前はっ!」
「ガゴゼ会の方々・・・。それ以上近づかないで下さい。
近づこうものなら・・・滅します」

前だけでなく後ろからも短い悲鳴が聞こえた。

無理もない。異形のモノたちを見ただけでもショックなのだ。
それを畳みかけるかのように、亜弥の隣には虎がいるのだから。

ただの虎ではない。亜弥の使役する式神だ。

ガゴゼ会のモノらはそれを理解し、畏れた。
ただ一人を除いて。

「なにをしている、早く殺せ!」

ガゴゼがそう叫ぶと畏れながらも再び襲いかけた。

「無駄よ。・・・虎邑、食べろ」

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