第3章 日常
ガオォォ!威嚇をするように吠えると殆どのガゴゼ会のモノはその場で倒れた。
後ろの者たちは勿論、残ったガゴゼ会のモノも驚いた。
「・・・な、なにが、」
「妖怪の闘いでは、畏れたら負けなんです」
倒れたモノは私に畏れた。
そう悲しげに睫毛を伏せて呟いた。
「ガゴゼ様、このことは不問とします。本家の方々にはなにも言いません。だから、退いて下さい」
脅しに似た最終通告をするとガゴゼは壊れたように笑い始めた。
「ガゴゼ様?」
「ガガガ!笑わせるな!そのような虎にこのガゴゼが負けるとでも!?」
そう言うや否や、ガゴゼは一気に詰め寄ってきた。
「(・・・この方は、本当に妖怪なのか?)」
本当の妖怪なら、虎邑を見ただけで式神だと分かる。
先程のガゴゼ会のモノたちですら分かり、畏れたのだ。
だが、ガゴゼにはわかってない。
「虎邑、喰え」
静かに呟くと虎邑はガゴゼに襲いかかる、・・・ハズだった。
「・・・ッ!!」
体の内側が焼けるように痛み始めた。
痛さのあまり、その場で踞った。
虎邑も主人の元へ駆け寄ろうとしたが、それは叶わなかった。具現する力も残っていないのか虎邑は瞬く間に消えた。
「・・・ハッ」
倒れていたガゴゼ会のモノが起き上がり始めた。
亜弥が発していた【畏】が解けたようだ。
「・・・ッガ、・・・ガガ・・・、ガガガ!このオレを負かそう等と寝言は寝て言え!!」
「ッ!!」
ドゴッ、腹を蹴った。
痛みが余程酷いのか悲鳴さえ上げれないらしい。
体の痛みのせいか、ガゴゼの蹴りのせいか亜弥はその場で吐血し意識を失いかけた。
「(・・・力を、使い過ぎた・・・)」
人間が陰陽師の能力を使うには並大抵ではない精神力を使う。
その陰陽師でさえ虎邑のような式神を使役できる者はそう多くない。
増して亜弥は半分人間ではないのだ。
精神力だけでは足りなく、他の力――【畏】も使って補わなければならないのだ。
以て1分。それが、亜弥の持つ陰陽師の能力で式神を使役できる時間だった。
「・・・何をしてる、早く殺すんだ」
「(・・・そんな、こと・・・させ・・・な、い)」
朦朧とする意識の中亜弥はまた虎邑を出そうとした。
が、時間切れのようだった。
亜弥の意識は、そこで途切れた。