第7章 ☆番外編☆『バレンタインの夜に欲しいもの』
呼ばれた先、彼のすぐ傍まで近寄ると、悠の顔が私の耳元へと近づいてきて私の頬は反射的に赤に染まっていく。
悠「………今の内に帰ろうぜ?」
囁きとともに耳を掠める悠の息が、じわりと私の体の奥を疼かせ、恥ずかしさを感じた私は俯いたまま小さく頷いた。
他のバイトメンバーが店長を囲んでいる中、悠に手を引かれ更衣室へと向かっている今の状況が、二人だけの秘め事のようで誰かに気づかれないかドキドキしながらも楽しくて幸せで。
悠「早く二人っきりになりてーな。」
ぽつりと呟かれた悠の言葉にドクン、と一際大きく心臓が音をたてる。
「……………うん///」
____二人で急いで身支度を済ませエレベーターへと乗り込むと、ドアが閉じると同時に重なった二人の唇。
「…………ん、……はぁ///」
あっという間に離れた熱は、未だに私の唇に甘い余韻を残していて、思わずそれに触れていると目の前の悠が、ふ、と柔らかな笑みを見せ、私の頬を撫でた。
悠「………こら、煽んなって………。押し倒したくなんだろーが。」
「なっ///!?………あっ、煽ってないから///!」
悠「ふっ………本当、可愛いな。お前。」
「~~~ッ///」
悠の甘い言葉によって壊れそうなほど早くなった鼓動。私は胸の辺りを押さえながら、黙りこんでしまっていた。
(本当に悠ってば、急に凄いこと言うんだから……///あんな格好イイ顔で言われたら、心臓持たないよ///!!)
_____ポーン
エレベーターが1階へとたどり着いた時、悠との甘いひとときによって浮かれていた私は、再び現実へと引き戻されることになった。
女性客1「あっ悠くん!待ってたんだよぉ♡はい、これ♡」
女性客2「ちょっと!私が先にあげるんだから!悠♡受け取ってね♡」
エレベーター前に群がる女の人達がこぞって悠を取り囲み、あっという間に私と彼は引き離されてしまい、気がつくと私は輪の外へと放り出されたのだった。