第7章 ☆番外編☆『バレンタインの夜に欲しいもの』
「も、もうっ海斗さんっ///!!からかって楽しむの止めてくださいっ!」
顔を赤くし抗議する私の頭をぽんぽんと撫でた後、再びホールへと戻っていこうとしていた海斗がくるりとこちらを振り返り、ウィンクを飛ばしてきて
海斗「えーっ本気なのになぁ。…………あと、花音からのチョコ期待してるから♪」
後ろ手にヒラヒラと手を振る海斗の背中を見ながら思わず小さくため息を吐いた私は、ドリンクを受けとるべく悠の待つバーカウンターへと足を運んだ。
バーカウンターの中でお客さんと話しながらドリンクを作る悠の姿に、ドキリと跳ねる心臓。
(悠…………)
すると、
心の声に反応したのか悠の視線がちらりとこちらに向き、私の視線とぶつかると、ふっと、細められた彼の瞳。
悠「はい、A6卓の。………よろしくね。」
たったそれだけの会話と、受けとる時に少しだけ触れた指から伝わってきた彼の熱に胸がきゅんと熱くなる。
普段からバイト中はなかなか話す機会が持てないが、今日はいつもの何倍も近づけない雰囲気だったため、こんな些細な接点すら本当に嬉しくて。
思わず緩んだ口許に、目の前の悠も柔らかな笑みを返してくれた。
二人の時間になることを心待にしているのは、きっと彼も同じなんだって思うと、今まで感じていた心のモヤモヤが晴れていくのを感じる。
人を好きになる気持ちは、辛いことも多いけど、その分
得られる幸せは大きくて。
彼のちょっとした表情だけでこんなにも心が満たされていく。
(あとちょっと、頑張るぞ___!)
残り時間もあと1時間___