第7章 ☆番外編☆『バレンタインの夜に欲しいもの』
店内の座席は全て埋まり、そのほとんどは女性客が占めていて。
今日の中心人物である悠と海斗は、それぞれお客さんの対応に追われている。
担当ポジションがホールである海斗はのらりくらりと巧いこと交わしつつ接客をしていたが、バーカウンター担当の悠は逃げることも出来ず、ひたすら女性客からのプレゼント&告白大会に内心、頭を抱えていた。
客1「悠くん、はい、これ♡もちろん大本命だから♡」
客2「本当に格好イイ~~♡♡♡バイト後って予定とかあるんですかぁ??」
客3「もう、本当に大好き♡ 悠~~~♡♡」
悠「……ありがとうございます。……バイト後のことはプライベートなので秘密ですよ。」
既にバーカウンターの中は渡されたプレゼントやらチョコで埋め尽くされつつあり、賢吾が定期的にやって来ては小言を置き土産に、プレゼントを回収し、バックヤードへと運んでいく。
悠「わりぃな。賢吾。本当に助かるわ。」
賢吾「………いーよ。別に………でも、俺、イケメン嫌いになりそう。」
ちなみにそんな賢吾は、お客さんから悠の友達だからという理由で義理チョコを渡され、単純に貰えた嬉しさと男としてのプライドで微妙な心境だった。
あまりにバーカウンターをきぼうする客が多かったため、
普段ではありえない1時間制を取り入れたカウンターを中心に店内のお客さんは入れ替わり立ち替わり変わっていく。
その度に悠たちはにこやかに対応しており、遠くから見ているだけで手伝うことすらできない私は、ただ心が落ち着かないまま時間が過ぎていった____
海斗「あーぁ。やぁっと俺は一段落だわ。疲れたよぅ~花音♡ハグさせて♡」
相変わらずお客さんから見えない死角をついては抱きついてこようとする海斗から距離を取るように逃げると、むぅ、と不機嫌そうな顔を向けられる。
「だめですよ!お仕事中です!!」
海斗「………何それ。本当に真面目なんだからさぁ…………ま、そんなとこもスゲエ可愛いけどね♪」