第2章 出会い
【○○様のご子息○○様がそなたの事を大変気に入り、一度お会いしたいといっている。家柄、人柄ともに申し分ない御方ゆえ、一度お会いして見てはどうか。そなたは、国府宮家の姫としての自覚を持ち、そろそろ嫁ぐことも考え始めなければならぬぞ。じじはそなたのことが心配なのだ。良き返事を期待しておる。】
「またか・・・」
「うん。まただよ・・・」
龍姫の様子で内容を理解した峰龍もともにため息を吐いた。
「お爺様も懲りないお方だな。」
柾天は苦笑いしながら、その書状を龍姫から受け取った。龍姫のことを実の孫のように接してくれている祖父は、姫の婿選びに必死なのであった。そのことを十分に理解している柾天もまた、姫のことが心配なのだった。
「それにしても、お前も真剣に考えてみてはどうだ?」
書状を綺麗に畳みながら柾天はボソリと呟いた。今まで口にすることはほとんどなかった柾天の本心だった。
「天兄上?」
龍姫は、キョトンとしていた。それは、柾天から言われることなどないと思っていた言葉であったからだった。
「すまない・・・。だが、私もまた心配なのだ。そなたは少し身体が弱いであろう・・・。この国府宮の姫として子をなせるかもわからぬ。そなたには良き家柄、人柄の者と結婚し、幸せになってもらいたいのだ。最近は、少し沈みがちであったことだし、何かあったのかと聞いても話してはくれないのだから、皆心配しているのだ。」
最近の龍姫の変化に、柾天は気付いていたのだった。それは龍姫だけでなく、峰龍に関してもいえることではあった。
「お前は、何を隠している・・・。家族である私達にも話せぬことなのか・・・。」
柾天の言葉に龍姫は黙って首を振ることしか出来なかった。ただ黙っていることしか出来ないのである。