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蒼き昊をみすえ

第2章 出会い


「峰龍。剣のお稽古?」
 「そうだよ。でも、今日の鍛錬は終わったんだ。父上が、急に参内することになってね。早く終わったから顔を見に来た。」
 峰龍の父親も宮中のお役所で働いているため、急な呼び出しにはすぐに対応していた。家が近いため峰龍は毎日のように龍姫の顔を覗きに来ていた。
 「まだ、寝ていたのか?」
 寝ぼけ眼の龍姫の側に座りながら、呆れ顔で座った。そんな峰龍の言葉に頷きながらは龍姫大きなあくびを一つ。
 「兄様(あにさま)が・・・」
 そう、何かを口にしようとして龍姫の口は止まった。峰龍の後を眺めたまま、少し気まずそうにし始めた。
 「なんだ?」
 峰龍が振り向こうとするのと同時に峰龍の頭に鉄斎が加わった。
 〈ゴンッ〉
 そんな音が聞こえてきそうなくらい重い拳が入った。その瞬間、峰龍は頭を抱え涙目になり、鉄斎を加えてきた人を思いっきりにらみつけた。その人物は、二人もよく知る二人の大好きな人でもあり、峰龍にとってライバル的な人でもあった。
 「天兄上!」
 二人はその人物を『天(てん)』と呼んだ。本名『国府宮 柾天(まさたか)』。国府宮家長男であり、龍姫の義兄である。龍姫、峰龍とは十以上年の差がある。
 「峰龍、姫は婚姻前の大切な体なのだぞ。不躾に傍によるとは何事か・・・」
 常に冷静沈着。あまり表情を変えないその顔は、整っており世間の姫様方からは大変好評であるその兄上様は、ほぼ毎日同じ様なことを言う。二人にとって当たり前の距離は、貴族社会では余りよろしくないようである。
 「兄上、お帰りなさい。今日はもうお仕事は終わりですか?」
 ホヤンとした妹の態度に少しため息を吐きながらも峰龍同様龍姫の傍に座るのでした。
 「いや、様子を見に戻ってきただけだ。最近は物騒だからな。それに、姫にお爺様からの書状を預かってきた。」
 そういうや否や、手紙を出してきた。その手紙に書かれていたのは、毎度同じ内容のことである。
 「はぁ。」
 読み終わった龍姫からは深いため息が毀れた。読まなくてもわかる内容は、龍姫には少し気分が滅入る内容であった。
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