• テキストサイズ

ミセバヤ

第1章 ミセバヤ


 二人で何気ない会話をしていた。いつもと同じ、普通の会話。学校では女子に冷たい彼だが本当は優しいことを知っている。何気なしに足の遅い私に合わせてゆっくり歩いてくれている。これがモテる男かとか思いながら、何気なしに彼をみつめる。
「なん?」
 少し、彼の声が上ずっていたが気にしない。というか、気にならなかった。夕日にあたった彼の銀髪が光って綺麗だったから、見入ってしまった。
「夏帆?」
「仁王君。綺麗やなぁ」
 ポロリと言葉が漏れた。学校では、仁王君と呼んでいても二人のときはそう呼んだことはなかった。だからなのか、仁王君が悲しそうな、苦しそうな顔をした。
「に、仁王君?」
 何が原因でそんな顔をしているのか気づきもせず、声をかける。学校で話すときの癖が抜けていなかっただけなのだが、彼にはそれどころではなかった。
「いやじゃ。」
「え?」
 そういって気づいたときには彼は私を抱きしめていた。
「ちょっ、まてや。こらこら。なにしてん?」
「そばにおって・・・」
 切ない声ですがるように抱きしめてくる彼が分からなかった。
「はる君?」
「夏帆・・・」
 そういって、キスをした。触れるだけのキスだったが、私は何が何だかわからなかった。
「は?」
「もう一回したい」
「は???」
 そういってもう一度キスしようとする、仁王君。とっさに自分の口を手で隠した。それが、彼には不満だったようで、ムッとしながら手をはずそうとしてきた。
/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp