第1章 ミセバヤ
「仁王。お前にとって夏帆は、どんな存在だ?」
「・・・。」
「俺は・・・」
「夏帆のことが好きじゃ。」
何も答えなかった仁王君に、幸村君が何か言おうとしたとき、耳を疑う言葉が聞こえてきた。
「は?」
そういったのは私だ。いつの間にか仁王君の方を向かされて、後ろから幸村君に抱きしめられる格好になっていた。でも、仁王君は下を向いて言葉を繋ぐことに必死になり過ぎて気づいていなかった。
「ずっと好きじゃった。幸村が夏帆と出会うずっと前からじゃ!!でも、夏帆は俺のことなんとも想っとらんくて、むしろ手のかかる弟ぐらいにしか考えてくれてなくて。小さい頃、何度好きじゃてゆうても信じてくれんくて。そうこうしとるうちに今になって、だんだん、離れとるようなって焦ったんじゃ。俺の夏帆じゃなくなる。誰かのもんになってしまうって。そしたら、我慢できんかった。好きなんじゃ。愛しとう。やから、やから俺から離れていかんで!!」
最後の言葉でやっとこっちを向いた仁王、はる君の顔は昔と同じ可愛いただのはる君だった。