第19章 辛い記憶
―夏妃side―
記憶が無いという状況はとても不安なことである。
幸い私には自分自身の名前と宮城に住んでいた頃の孝支くんの記憶だけ残っていたから普段の生活を取り戻すのもそこまで苦労はしなかった。
鉄朗と研磨は記憶のない私のところに毎日訪れてくれた。そのおかげで退屈な病院生活が楽しかったし、早く退院することができた。
退院してからは学校生活に向けてクラスメイトの顔と名前を覚えたり、1学期の勉強の復習に明け暮れた。
そんなあっという間の夏休みは終わり2学期が始まった。
黒尾『夏妃ー!迎に来たぞー!』
夏妃『ごめん鉄朗、待った?』
黒尾『ま、今来たとこだから、じゃあ学校に行きますか!』
夏妃『うん!なんだか楽しみなような不安なような』
黒尾『夏妃なら1日で仲良くなれそうだけどな!』
鉄朗のおかげで不安だった気持ちが晴れたような気がした。