【黒バス】悪童くんと、良い子ちゃん。【花宮・R18】
第1章 始まりは
家族以外に敬語を使うのに慣れず、語尾がしりすぼみになってしまった
あの後さっさと練習に加わった花宮さんが一足先にステージに戻って来て、ホイッスルを鳴らして「休憩」と言った
良く通る声だ、と思う。少し羨ましい
「お疲れ様です!」
*
「…有栖、わざわざ全員に声をかけなくて良いんだぞ」
「え、だって声かけられた方が嬉しくないですか?何か、見てたんだなぁ、って」
「ちょw真面目w」
「え、鬱陶しかったですか?すみません、以後気を付けます…」
「…桐原、敬語」
「あ、え、すみませ…ごめ、ん」
流石に敬語は癖だし、外すのは下手だけど
慌てて口調を直し、俯く
「あれ、桐原ちゃん敬語やめたの?」
「花宮さ…花宮くん、が、外せ、って、仰っ…言った、から…」
慣れない
難しい
恥ずかしい
そんな感情が渦巻く私を、その場の皆が見つめる
いっぱいいっぱいの私は誰かに助けを求めたくても無理で、どんどん顔が熱くなる
「すみませ…ごめ、見ないで…」
ずる、と座り込んだ私を見て、花宮さん…くん、が私の手を引いて外に出る
「…え、花宮、くん?」
「大丈夫かよ、お前そんな簡単に知恵熱出すような奴か」
「知恵熱…。あ、だから頭痛…」
自覚すると尚更頭痛がひどくなる
脚に力が入らなくなり、そのまま意識も手放す
この時私は、何を考えてそこまでの事になったのかは覚えていなかった
意識を手放す瞬間、珍しく焦った様子の花宮くんが視界に入っていた
*
ガタン、と体育館の扉が開く
全員の視線がそこに集中すると、有栖を抱きかかえた花宮がいた
「あれ、珍しいね花宮。女子に優しくするとか」
「うるせぇ、何か知らねぇが熱出してぶっ倒れてんだよ。おい古橋」
「何だ?」
「こいつの家教えろ」
「…あぁ、すぐそこのマンションだぞ」
「うわ、同じマンションかよ」
「12階の筈だ。確か花宮も12階じゃなかったか」
「くそ、マジかよ」
原は何が面白かったのか一人で酷く笑っている
実際あのマンションは金持ちが住むような大きなもので、ワンフロアが二つの部屋…家?に別れている
花宮は121番、有栖は122番の筈だ
にしても、気付かないのか