第27章 お菓子は正義
紫原side
ついさっき準決勝の試合が終わったところだった
俺は赤ちんに言われてたから出てない
先輩や雅子ちんにはかなり怒られたけど、赤ちんの命令は絶対だから仕方ない
(それに赤ちんとは戦いたくないしね〜)
でも負けて悔しそうな皆の顔を見ると、なぜかズキンと少し胸が痛んだ
(そーいや、峰ちんも出てなかったな〜。まあどうでも良いけど〜)
久しぶりに見た元チームメイトの2人
俺は“彼女”がどこの高校に行ったか知らなかったから、その2人の学校のベンチに“彼女”がいないことに安心した
だけど「もしかしたら今日会えるかも」なんて思っていたから落胆している自分もいた
そんな彼女と俺が会った最後の日
≡≡≡回想≡≡≡
俺はその日、ちんに呼び出され屋上に来ていた
何の用かと思ったら、用件は俺にマフラーと耳あてを渡したかっただけらしい
自分の期待していた展開とは少し違った
俺は赤ちんの高校に行かないなら俺のとこ来てって言ったんだけど、断られた
それが辛くて悔しくて、俺は思ってもないことばっかりちんに言っちゃったんだ
「……じゃあ、もう俺ちん嫌ーい。あっち行ってよ、ウザいからー」
俺は屋上から出て行ったちんを追いかけることもできずに、もらったマフラーと耳あてが入った袋をずっと抱きしめていた
(嫌いな訳… ねーじゃん……)
本当は久しぶりに会えて嬉しかったことも、わざわざマフラーと耳当て用意してくれて嬉しかったことも、ちんのことずっと好きだったってことも、全部伝えることができなかった
≡≡≡回想終了≡≡≡
俺は秋田に行って、ちんの姿を見かけることも無くなったら、一緒に“好き”っていう気持ちも無くなるもんだと思ってた
でもそれは違って、ちんより可愛いって思える子がいるはずなくて、ちんのことを思い出さない日はなかったし、くれたマフラーと耳あてもちゃんと寮の部屋に大事にしまっている自分がいた
(ちん… 会いたい……)
なんて叶うはずのないことを思いながら、俺はいつものようにうまい棒を食べる
1人トイレに行っていた俺は控え室までの廊下を歩いていた