第15章 如月、部活やめるってよ
朝、学校に行く支度を終えた私は玄関で靴を履く。
鏡で髪とリップのチェックをする。
ガチャ
隣の家の扉が開く音がする。
私は扉の前で耳を澄ます。
トントン
つま先で地面を蹴ってスニーカーを履く音。
タッタッ
歩き出す。いつものように早足で。
足音が遠くなる。
私は自分の家の扉を開ける。
私の行く方向のずっと先、斗真の後ろ姿が見える。
私の幼なじみで仲良しの友達…
だった。
私はどんどん小さくなる斗真の背中を見ながら、同じ道をゆっくり歩く。
…
生まれたときから家が隣で同い年。
当然のように仲良しだった。
斗真は子供のときから運動神経抜群で、どんくさい私はいつもからかわれた。
でも他の男の子にからかわれたら、かばってくれた。
「もっとゆっくり歩いて」って私が頼めばゆっくり歩いてくれたし、
「あの道は大きい犬がいるから通りたくない」って言えば一緒に遠まわりしてくれた。
小学校も中学校も一緒。
でも中学のとき…
「斗真と愛、ラブラブだね。付き合ってんの?」
って冷やかされた私は…
「勘弁してよ。あんなヤツ嫌い」
って答えた。
斗真の前で。
その日から私たちは「おはよう」も言わなくなったの。