第15章 如月、部活やめるってよ
桃越先輩にオープン前のクラブに連れてきてもらった。
「とりあえず何か飲もうか…って、もちろんジュースだけどね」
先輩がVIPルームにドリンクを持ってきてくれる。
「ありがとうございます。ここ…お洒落なお店ですね」
グラスを両手で持って先輩の顔を見上げる。
先輩はちょっと得意気にニッコリ微笑む。
「オレ、ここのオーナーと顔なじみでね。アイデア出しに協力させてもらったんだ。ハコのテーマとか」
「えーすごい、かっこいい。先輩って何でも出来るんですね」
「まぁハコ通いには慣れてるからね。知識はあるかも」
「うーん、えっと…」
「ん? 何?」
「ハコってクラブのことで合ってますか?」
「ぷっ、ゴメンゴメン。そこから? 合ってるよ」
先輩はニコニコ微笑んで、私の頭をなでなでする。
「私、こういうところ来たの初めてで…。今度、先輩がDJしてるところ見たいです」
「じゃあ、この店がオープンしたら、またキミを真っ先に連れてきてあげる」
「本当ですか? でも…私でいいんですか?」
「キミがいいの」
先輩は私をそっと抱き寄せて、頬にキスした。
…
ハコ=クラブ、なんてもちろんわかってるし、クラブに初めて来たなんていうのも嘘。
でも桃越先輩にはそういうのウケるんじゃないかなって。
別に桃越先輩のこと好きなわけじゃない。
すごくかっこいいとは思うけど。
誰かに私を好きになってもらいたいだけ。
認めてもらいたい。
誰でもいいから。
……誰でも?