第15章 如月、部活やめるってよ
放課後の女子トイレ。
髪にマジックカーラー、まつ毛にビューラーする私。
様子を見た友達に話しかけられる。
「愛、もしかして気合い入ってる? 今日誰と帰るの?」
「んー、今日はね。桃越先輩」
「それは気合い入るね」
友達がニヤッと笑う。私も。
ナチュラルメイクを作り込んだ上で、リップはいつもより薄めのベビーピンク。
こういうのがウケるはず。
隣で友達もメイク道具を出してリップを塗り始める。
「そういえば、如月って部活やめるの?」
リップをポンポンと押さえる私の指が止まる。
「さぁ?」
私は首を傾げる。
「知らない? 愛に聞けばわかるかなと思ったんだけど」
「んー家が隣っていってもねー。住む世界が違うし、彼とは」
私はわざと大げさに冗談めかして答える。
友達はそれにウケてのってくる。
「そうかもねー。キラキラしてるもんねー」
キラキラ…ね。
そうだね、キラキラしてて住む世界が違うよ。本当に。
「…でも、部活やめちゃったら普通の人なんじゃね?」
私は悪い笑顔を作って言う。
「ぷっ。言い過ぎっしょ」
友達がケラケラ笑った。