第14章 僕のストーカー(逢坂紘夢)
わからないから聞いたのに、全然参考にならなかった。
頼りにならない男だな、鳴海は。
僕は1年E組の教室に向かう。
メモは付けないでおいた。
書くネタがなくなるといけないし。
1年E組の教室を覗く。
賑やかな声が聞こえてくる。
教室の後ろの方で女子が輪になって騒いでいる。
真ん中で歌を歌っているのは…神田さんだ。
何かアイドルの曲かな。
あの子は演劇部だから人前で何かをすることが好きなんだろうけど…多趣味なんだな。
僕は廊下から、しばらくその様子を眺める。
歌い終わってポーズを取った神田さんが、廊下にいる僕に気づく。
「うわぁ先輩っ! いつからそこにいたんですかぁ!」
神田さんが、わぁーっと駆け寄ってくる。
「誰?」「先輩?」「彼氏?」「愛の?」
まわりの女子が口ぐちに噂する。
「いつから…? そうだな…Bメロ辺りかな。君は歌も上手なんだね。
はい、これ、ごちそうさま。今日も美味しかった」
僕は空の弁当包みを神田さんに渡す。
「わぁあ…変なものを聞かせてしまってお恥ずかしいです…」
神田さんは弁当包みを胸に抱えてもじもじする。
ぷっ、ちょっと可愛い。