第14章 僕のストーカー(逢坂紘夢)
おにぎりを受け取り、僕は公園のベンチに座る。
「あの…創作のお邪魔になるといけないので、私はこれで失礼します」
「いや、隣に座ってくれない? このご時世、男がひとり公園で子供を眺めていると通報されるかもしれない」
ペコッと礼して立ち去ろうとするその子を僕は引きとめる。
「あ…はい。逢坂先輩が不審者だと思われるとは思いませんが、そういうことでしたら、隣失礼します」
だいぶ間を開けてその子は隣に座る。
「ごめん、名前なんだっけ」
おにぎりを食べながら、僕は尋ねる。
「愛です。神田愛です」
「何組?」
「1年E組です。えと…演劇部です」
「うん、それは知ってる。
…ていうか、このおにぎり何? すごく美味しい!」
「あ、先輩、おかか好きなんですか? よかったですぅ」
その子は…神田さんは嬉しそうに顔をほころばせる。
「これかつお節だけ? それでこんなに美味しいの?」
「そうですね。かつお節を醤油とみりんで味付けしてフライパンで軽く炒めて水分を飛ばしました。その一手間で醤油の風味もたつし、持ちもよくなるんですよ」
神田さんが、ニッコリ笑って説明する。
「君、料理が得意なんだね。じゃあ、あの弁当も本当に君が作ったの? あまりにも上手だから、君のお母さんが作ったんじゃないかと思ったよ」
神田さんは、ふふっと少し笑う。
「得意というか…好きですね、料理。母に教えてもらったんです。
でも今はお弁当は全部自分で作っているんです。働く母のために母の分と自分の分と。母に喜んでもらうために母が作らないような料理もチャレンジしてみたり。
だから…一人分増えるくらい、手間はたいしたことはないんですよ」
「…ふーん」