第2章 キミとの距離(芹澤悠吏)
今日は放課後、私の部屋で芹澤先輩に勉強を教えてもらう約束をしてる。
先輩、数学が得意だから…ていうのは口実で、私の部屋に来てもらいたかったから私が誘った。
「今日、お家の人はいるの?」
先輩がちょっと心配そうに聞く。私は答える。
「いないですよ。母は働いてるし、私は兄弟いないし」
「そうなんだ。あっ…で、でも家で二人きりってこと?いいのかな…?」
先輩がちょっとおずおずと尋ねる。
二人きりになれるから誘ったのに。
「こっちです」
「…!」
私は先輩の質問をわざと無視して、先輩の手をギュッと握った。
…
「可愛い部屋だね…女子って感じ!」
先輩が嬉しそうに私の部屋を眺める。
「ふふ、ありがとうございます。でも先輩、お姉さんと妹さんがいるからこんなの見慣れてるでしょ?」
「いやいや〜うちの姉妹の部屋はもっと散らかってるよ?」
先輩が笑いながら言う。
「わたしも普段は散らかってるかも…。先輩がくるから片付けたんです」
「え!ボクのために片付けてくれたの?なんだか感激!」
こんなことで感激してくれるなんて…私はもっといろいろしてあげたいんだけどなぁ。
でも先輩って何しても褒めてくれるから、逆に何したら喜んでくれるのかよくわからないんだよね。
とりあえず今日の口実だし、勉強しよっかな。
「先輩、2年の勉強に付き合わせて悪いんですけど教えてもらえますか?」
「いいよ〜ボクでわかることなら…。復習にもなるしね」
先輩は優しく微笑んでくれた。