第2章 キミとの距離(芹澤悠吏)
私たちは中庭のベンチに座る。
いい天気で気持ちいい。
「先輩、またサンドイッチ?栄養足りないですよ。
わたしのお弁当食べて下さい。
この卵焼きわたしが作ったんですよ〜」
他のおかずは冷凍食品だけどね。
「はい、あーん」
私は卵焼きをお箸で掴んで先輩の口に持っていく。
「あっ、ありがと…」
先輩はキョロキョロして周りを伺いながら、卵焼きを口に入れる。
「うん!美味しい!ほんのり甘くてしっとりふわふわで…」
先輩が丁寧に褒めてくれる。
「もう、先輩褒めすぎー。普通ですよ」
私は謙遜しておく。
でも先輩はもっと褒めてくれる。優しいから。
「いやいや、本当にっ。愛ぽんいいお嫁さんになれるよ」
「うふ。先輩の?」
「…っ」
先輩が黙る。
…もう。こういうのに気のきいた返ししてくれないんだから。
「冗談ですよ〜」
「…あはは。だよね」
私は先輩と一緒にニコニコ笑う。
でも心の中ではちょっと怒ってる。
わたし、先輩と付き合い始めてまだ1ヶ月だけど、本当に先輩と結婚したいくらい先輩のこと大好きだもん。
でも先輩はどうなのかなぁ…。
先輩は優しいから…私が「付き合ってください!」って言ったの断れなかっただけなんじゃないかな…。